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役に立つ不動産の知識〜トラブル事例〜

賃貸に関するトラブル

裁判事例敷引特約と消費者契約法10条(1)

大阪地裁判決 平成17年4月20日
(判例集未登載)

《要旨》

敷金特約について、居室の通常損耗の修繕費用を超える部分については、敷引特約の趣旨を逸脱したものであり、消費者契約法10条に違反して無効であるとされた事例

(1) 事案の概要

Xは、平成15年6月、不動産賃貸業を行うYから、共同住宅の一室を、賃料7万円、共益費1万円、保証金50万円、解約時引金40万円、返還保証金10万円、契約期間2年間の内容で賃借した。Xは11か月ほどで転居することとしたところ、Yは、本物件明渡し時に、50万円の保証金のうちから敷引額40万円を差し引いた残額10万円を補修費用に充て、返還金がない旨をXに告知した。Xは、保証金からペットによる損耗の補修費を差し引いた金額等をYに支払うよう求めた。
これに対して、Yは敷引特約に基づき敷引分の返還をすることはできない等と主張し、Xは敷引特約は消費者契約法10条に違背し無効であると争った。

(2) 判決の要旨

【1】本件敷引特約の内容は、保証金の8割にも及んでいること、入居期間の長短にも関わらず一律に保証金50万円から40万円を差し引いていること、その趣旨が、通常損耗部分の補修費に充てるためのものであるとしても、その金額が大きく本件敷引特約の趣旨を逸脱していると考えられるから、消費者契約法10条のいう民法の公の秩序に関しない規定(民法601条、606条)の適用の場合に比し、消費者である賃借人の義務を加重する条項に該当する。

【2】しかしながら、関西とりわけ京阪神地方においては賃貸借契約終了時に敷金の2ないし3割を控除して敷金を返還するという慣行が存在している。これは、敷金の額が相当で、賃料額が敷引を考慮して適正額に抑えられている限り、必ずしも不当とはいえない。したがって、本件敷引特約条項の全部を無効とするのは、当事者の合理的意思に反するものと考えられる。

【3】本件敷引特約の趣旨は通常損耗部分の補修費に充てるためのものとみるのが相当であり、敷引額が適正額の範囲内では有効であり、その適正額を超える部分につき無効となるものと解する。2年間の賃貸借契約の間に通常損耗分の補修費として必要な額は、保証金の2割に相当する10万円とみるのが相当である。よって、解約時引金40万円のうち30万円については、無効となる。

(3) まとめ

本判決は、敷引の慣行は、敷金の額が相当で、賃料額が敷引を考慮して適正額に抑えている限り、長年の慣行であることから必ずしも不適当とはいえないとして、敷引額が適正額の範囲内では当該特約は有効であり、その適正額を超える部分につき無効となるとしている。

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