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賃貸に関するトラブル

裁判事例敷引特約と消費者契約法10条(2)

神戸地裁判決 平成17年7月14日
(判例時報 1901号 87頁)

《要旨》

敷引特約は消費者契約法10条により無効とされた事例

(1) 事案の概要

Xは、平成15年7月、不動産業者であるYとの間で、建物(以下「本件建物」という。)を2年の期間で賃借する契約を締結し、本件賃貸借契約終了時に敷引金として25万円(以下「本件敷引金」という。)を差し引いた残額の償還を受ける旨の合意(以下「本件敷引特約」という。)のもと、保証金として30万円を預け入れた。
平成16年2月、Xは本件賃貸借契約を解約し、Yに対し、本件建物を明け渡した。Yは本件建物の明け渡しを受けた際、Xに対し、保証金30万円から本件敷引金25万円を差引いた残額である5万円を返還した。Xは、本件敷引特約が消費者契約法10条により無効であるとして、本件敷引金の返還を求めた。

(2) 判決の要旨

【1】民法上、債務不履行がある場合は別として、賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる旨の規定は存在せず、また、学説や判例の集積等によっても敷引特約が確立されたものとして一般的に承認されているということはできない。したがって、賃借人に賃料以外の金銭的負担を負わせる内容の本件敷引特約は、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比して賃借人の義務を加重するものと認められる。

【2】敷引金の性質について、一般的には、賃貸借契約成立の謝礼、賃貸目的物の自然損耗の修繕費用、賃貸借契約更新時の更新料免除の対価、賃貸借契約終了後の空室賃料、賃料を低額にすることの代償などと説明され、本件敷引金の性質はこれら5つのものが渾然一体をなすものとしてとらえられるが、これらの性質から見ると、賃借人に本件敷引金を負担させることに正当な理由は見出せず、一方的で不合理な負担を強いているものと言わざるを得ない。

【3】さらに、賃貸事業者であるYと消費者であるXの交渉力の差や、関西地区における不動産賃貸借において敷引特約が付されることが慣行となっていることから賃借人がこの特約を排除することは困難であり、賃貸事業者が消費者である賃借人に敷引特約を一方的に押し付けている。

【4】したがって、本件敷引特約は、賃貸借契約に関する任意規定の適用による場合に比し、賃借人の義務を加重し、信義則に反して賃借人の利益を一方的に害するものであるから、消費者契約法10条により無効であり、本件敷引金に対する保証金の支払を求めるXの請求は理由があるので、原判決を取消し、Xの請求を認容することとする。

(3) まとめ

本判決は、一審の簡裁で認められた「敷引特約」を、信義則に反して借主に必要以上の負担を加重し、不合理な特約として否定した。 「敷引特約」の効力が争われることが多くなっているが、消費者契約法10条により無効とした本件と同様の事例として、大阪簡判平成15年10月16日、京都地判平成19年4月20日等がある。

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