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役に立つ不動産の知識〜トラブル事例〜

売買に関するトラブル

売主が手付倍返しで解除してきたが、何とか契約を維持したい
業者の媒介で、都心にほど近い中古住宅を1億2000万円で購入しました。手付として300万円を打ってあるのですが、このほど、売主から手付倍返しにしてもこの取引はなかったことにしてほしいといってきたと、媒介業者から連絡がありました。プロの業者が媒介し間に入っているのに、こんなことがあるのでしょうか。
(青山 明 53歳 個人店主)

苦情の内容

青山さんは、手付金は当然のことながら支払済みである。しかし、いわゆる中間金に相当する金銭の支払いは、予定しなかった。代金は、資金繰りの関係上、成約の6ヶ月後に一括して支払うという契約内容になっていた。そして、青山さんは、そのための資金調達の算段を始め、その目安もついた矢先だった。突如、売主から手付金の倍額を償還して、この売買契約を解除するといわれた。青山さんは、倍戻し金の受領は拒んでいる段階だが、いまさら代替物件を求めようにも目的地の近隣はこの2〜3ヶ月のうちにさらに値上がりしたそうだし、そもそも売り物件もないという。全く、これでは予定が狂うというもの。

業者の言い分

実は、私ども媒介業者としても弱っているのです。買主には手付金を入れさせ、売買契約書はきちんと作成し、売主との間でとり交わさせました。買主の方は、代金支払いの準備もでき、売主に約定の支払い期限前に支払う用意もある旨お話もしているのです。どうも、売主の話の様子からすると、私どもが成約をとりつけた後で他の業者が介入したようです。その業者は、もっと高額で売ってやるとか、業者自身が買いとってやるとか言い、手付金の倍戻しをしても売主には損にならないようにするとたきつけていたようです。こんなことでは、不動産取引はめちゃめちゃです。私ども媒介業者も、媒介報酬をもらうどころか、買主から大変なお叱りを受けほとほと困っています。

紛争相談窓口の考え

「手付を放棄して、契約を解除したら・・・・」とは、買主に対し、締結した契約の拘束から解放させるときにいう。また、軽率に約定した買主には、「手付損は、“授業料”だと思え」ともいってきた。他方手付倍返しによる解除は、単にいわば教科書の例でしかないとすら考えていた。
ところが、地価の高騰に伴う特殊例外的な事象であるが、このようなトラブルに類する事例は稀ではない。確かに、いったん約束(契約)したことは守られなくてはならない。それが、契約正義の要請であり、取引の安全をもたらす。しかし、他面、手付は、私人間取引でも解約手付とされるのが一般である(民法557条、業法39条参照)。最高裁の判例に従えば、売主は相手方(買主)が履行に着手(中間金の支払い等)するまでは、手付の倍額を償還して解除できる。それも、その理由のいかんを問わずに。

トラブルの結末
売主による手付倍額償還による提供があれば、買主が受領を拒絶しても契約は解除される。こんな判例(大判昭15.7.29)もあると、買主の青山さんは聞き及び、受領するほかなく、本契約は売主の手付倍返しで解除された。

トラブルから学ぶこと

本件のような事例における買主の事前の対応策としては、(1)手付放棄・倍返しによる解除権を行使できる期間(例えば契約締結の日から1ヶ月)を契約書に定めておく、(2)手付の額を高くする、(3)本件のように業者が売主でない取引においては、「手付は解約手付としない」旨の特約条項を入れる、(4)残金決済までの期間を短く設定する、(5)中間金の支払いを約定して履行に着手する、などが考えられるが、いずれにしても、このような売主の手付倍返しによる解除は地価急騰等における特殊な事例といえよう。

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